今回は、実質値上げって、ファン客のウケが悪いから、あんまりオススメできないです・・・って話です。
突然ですが、
①以前と同じサイズだけど値上げしたおまんじゅうと、
②以前よりも小さいサイズだけど同じ値段のおまんじゅうとでは、
どちらのおまんじゅうを買おうと思いますか?
こういった価格決定って、結構悩ましい部分ですよね?①は単なる値上げ、②は実質値上げです。仮にどちらも同額の儲けが出るとしても、なんとなく②のような実質値上げを行うケースが多いようです。
その背景には、単なる心象問題(「値上げした」と思われるのが嫌・・・など)だけでなく、いつも買ってくれるお客さんに金銭的負担をかけたくないというような、優しい願いもあったりします。
ここでいう「実質値上げ」とは、販売価格は同じでも内容量を減らすなどして、実質的な”値上げ”をすることです。
例えば、価格100円/100gで販売していたものを、何かのタイミングで価格100円/80gで販売するというケースがそうです。
よくあるケースとしては、原材料費の高騰によって”やむを得ず”、量を減らして販売価格を維持するというケース。
「本当は値上げはしたくないんだけど、材料費が高くなったたため、値上げしないと赤字になってしまうから仕方なく・・・・」というような、お客さんも(しぶしぶ)納得してくれる理由があることがほとんどです。
しかし、この”実質値上げ”が、ファン客を逃してしまう原因になることもあります。
”実質値上げ”は、顧客流出を防ぐ値上げ戦略。
通常、”実質値上げ”を行う理由は、”顧客離れ”を防ぐための戦略として採用されるケースが多いです。
「値上げをしなければ赤字になってしまうので、商売が成り立たなくなる。しかし、単純に値段を上げると、今度はお客さんが買ってくれなくなるリスクがある・・・。」
そんな悩みを解消する施策としてよく使われるのが、この”実質値上げ”という、サイズや量を減らすことでコスト調整を行い、販売価格を維持するという方法です。
購買心理としても、サイズが同じで値上がりしたものよりも、値段が同じで、サイズが縮小されたものの方が、購入の際の抵抗(買うか、買わないかを悩むこと)が少ないという傾向があります。
つまり、”単純な値上げ”を行うよりも、お値段据え置きでサイズを調整する”実質値上げ”の方が、お客さんの金銭的な影響も少ないということもあり、引き続き、購入してもらいやすいということです。
ですから国内外を問わず、この”実質値上げ”を採用することが、オーソドックスな戦略になりつつあるという印象が強いです。
実質値上げ は、ファンを逃してしまうリスクも・・・
しかし、その顧客離れを防ぐための”実質値上げ”を行うことによって、ファン客を逃す原因になることもあります。
どういうことかというと、例えばファン客が、その商品のサイズに魅力を感じていた場合、そのサイズが縮小されてしまったら、商品の魅力が激減してしまうということなので、その商品を買う理由がなくなってしまうということです。
私も、あるパン屋さんの50㎝くらいの長さのパンが好きで、パンを買う際にはそのパン屋さんで、そのパンを買うようにしていたのですが、先日久々にいった時には、長さが半分で価格がそのままという”実質値上げ”を行っており、大変ショックを受けました。
私が魅力を感じていたのは、その”パンの長さ”だったので、長さが半分になってしまったら魅力が半減どころか、無くなったといっても過言ではありません。正直、「長さを半分で同じ価格にするくらいなら、値段を倍にしてくれた方がマシ」と、なんの面識もない店主に言いたくなりました。(自制が働き言いませんでしたけど・・・。)
では、サイズをそのままに、原価分の値上げをすれば良いのか?というと、そういうわけでもありません。
なぜなら、単純値上げすることによって、今度はファン客以外の顧客は買わなくなるリスクが大きくなるからです。私のように、長さに魅力を感じている人ならば、値上げしても長い方を買いますが、そうではない人にとっては、「うわ!値上げした。しかも高っ!」と思われてしまう恐れがあるからです。
ですから、”単純値上げ”や”実質値上げ”などの値上げをする際には、その商品の特性と購入客の傾向を把握することがとても重要なポイントになるのです。
商品特性と購入客の傾向とは?
値上げをせざるを得ないけれど、出来れば顧客の流出も、ファン客の流出も最小限にしたいと考えているのであれば、値上げする商品の商品特性と購入客の傾向を把握することがポイントになります。
商品特性というのは、その商品の魅力は何か?ということです。
例えば、紹介したパン屋さんの例のように、大きさが魅力の商品であれば大きさを維持したままの単純値上げを、味に魅力がある商品であればサイズ調整で価格を維持した実質値上げを、というように考えることができます。
また、それと同時に、顧客の傾向も分析することも大切です。
顧客の傾向とは、その商品を購入するのは、どんなお客さんなのか?ということです。要するに、常連さんなのか?たまにしか買わないお客さんなのか?新規のお客さんなのか?ということです。
例えば、常連さんなら、その商品以外にもいろいろ購入してくれるので、トータル的な支払金額が増えると、購入金額か購入回数が減るリスクがあるので、実質値上げにする。とか、逆に、たまにしか買わないお客さんが良く買う商品であれば、単純値上げにするとか・・・。
・・・と、ざっくり紹介しましたが、正直にいうと、これを判断するのは私でも難しいです(-_-;)
様々な要因が考えられますし、小さなお店の場合、そもそも顧客管理を行っていないので、常連さんが何を買い、たまにくるお客さんが何を買っているのか?などを把握していない場合もあるからです。
ですから、値上げをする際に私がオススメしているのは、小さなテストを繰り返すことです。
小さなテストを繰り返し、確率の高い選択をしよう!
マーケティングにおいて、小さなテストというのは基本的なことでありながら、非常に重要な戦術の一つです。
小さなテストというのは、文字通り、”少しずつ試してみる”ということです。
例えば、先ほどのパン屋さんの例でいうと、長さを維持したまた単純値上げしたパンと、長さを半分にして価格を維持したパンの両方を少数ずつ販売するというテスト販売ができますよね?そうすることで、どの長さのパンが一番売れるのかということを、簡単に計測することができます。
尚、このケースの場合、長さを半分より少し長くして価格も少し値上げした”中間”に位置するパンも販売することをオススメします。
なぜ、中間に位置するパンも加えることを薦めるのかというと、高・中・下(世間的には松竹梅ですね・・・。)という商品構成にした場合、一番売れるのは真ん中の”中”商品だからです。
こうすることで、実質値上げしただけで販売価格を維持する”下”商品を販売するよりも、”中”商品を販売した方が売上を増やすことができます。要するに、実質値上げをしながらも、ちゃっかり売上も増やすためのちょっとしたテクニックです。
そういったテストを繰り返し行うことで、顧客流出が少なく、ファン客も維持する方法を選択していくことがとても重要なのです。
ちなみに、長さをキープし値段が倍の商品は、ファン客にしか売れないという場合、その商品を限定商品にすることでファン客以外のお客さんにも売れるようになります。(これも、売上を増やすためのちょっとしたテクニックです(^_^)v)
そういったことも含めて、小さなテストを行い値上げ方法を決めてみてはいかがでしょうか?
今回は以上です。
面白いと思ったら、是非、取組んでみてください。
P.S.
私がショックを受けたパン屋さんの、長さを半分にしてお値段据え置き価格のパンですが、じつは、結構売れていました・・・。私が並んでいる間に、どんどんトレーに乗せるお客さんがたくさんいたので、人気商品なんだな~と思いながらみてました。
ちなみに、私も購入しましたよ。長さも魅力ですが、味も美味しいので、実質値上げに不満を持ちちつつも、買ってしまいました・・・。短くなってたけど、前と同様においしかったです(^_^)v