江戸時代の商人 が、商売道具よりも大事にしていたものがあると言われています。それは、なにかというと、顧客の情報が記載されている顧客台帳です。
なぜそんなことがわかるのかというと、火事のエピソードがあるからです。
江戸時代の商人 は常に 火事と隣り合わせ !?
「火事とケンカは江戸の華」なんて言われるくらい江戸時代の江戸の町は、年中火事がおきていたと言われています。
もしあなたは、職場が火事になったときに、真っ先に何をしますか?せっかくなので、考えてみてください。
通帳を持ち出しますか?
主要な商売道具を持ち出しますか?
金庫を持ち出しますか?
パソコンですか?
それとも、身一つで飛び出しますか?
いざ実際に考えてみると、何をした方がいいのか?優先順位がつけられていないということに気づくと思います。(ちゃんと優先順位がつけられている人は、すごいです!)
では、江戸時代の商人はお店が火事になった時に、真っ先に何をしたのか?というと、それは、顧客台帳を井戸に投げ込むという行為です。
井戸に紙の顧客台帳を投げ込んだら、びしょぬれになって使い物にならなくなると思ってしまいますよね?ところが、江戸時代の顧客台帳は特殊な紙で作られていたので、水に浸かっても文字がにじまないようにできていたのだそうです。
江戸時代にそんな技術があるというのもすごいですが、視点を変えれば、それだけ、耐水性のある紙の需要があったということもわかります。
だから、本当に火事の被害に合うケースが多かったんでしょうね。今では全然想像できないですけど。
江戸時代の商人 が 顧客台帳 を 最優先 した理由とは?
では、なぜ商品や商売道具ではなく、顧客台帳を真っ先に井戸に投げ込んだのでしょうか?それは、江戸時代の商人は ”あること” を知っていたからです。
その ”あること”とは、
商品や建物が燃えた損失は、後から考えたら微々たるものですが、それにくらべて顧客台帳の消失による損失は計り知れない
ということです。(現代に置き換えて考えると、商品や建物の損失も計り知れない損失ですが・・・。)
どういうことなのかというと、建物は立て直すことができますし、商品も再び仕入れることでなんとかなりますが、顧客台帳だけは、また一から作らなければなりません。
仮に、同じ場所ですぐ商売を再開できるなら、既存のお客さんがまた来てくれるかもしれませんが、違う場所に引っ越してから商売を再開するとなったらどうでしょう?今ならネットを通じて情報発信できますが、当時はそんなことはできません。ですから既存のお客さんは、引っ越し先の場所を知りませんし、商売を再開したことを知る機会もなかなかなかったはずです。
つまり、顧客台帳がないと、商売を再開するにしても、また新規客を集めるところからやる必要がでてくるのです。
おそらく江戸時代の商人も、新規客に商品を売るよりも、既存の購入客に商品を売ることの方が簡単であるということを知っていたのだと思います。(なぜ新規客よりも既存客に商品を売る方が簡単なのかということについては、コラム「新規と既存客、どっちが大事?」に掲載しています。)
ですから、火事になった時には、顧客台帳を真っ先に確保していたのです。
一説によると、火事がおさまると井戸から顧客台帳を引き上げて、顧客台帳に記載されたお客様を1軒1軒回ったそうです。
この行為により「火事になって大変だったのに、わざわざそれを教えに来てくれたのかい。よし、それじゃまた商品買ってあげるよ!」なんて感じで、お客様との関係を維持するどころか、好印象を与え、お客さんがまた商品を購入してくれる機会を作っていたのだそうです。
なかなかの戦略ですよね。転んでもただでは起きぬってやつですね・・・ちがうか!?
ビジネス継続 の 秘訣 は 顧客の維持
このことは今でも十分通用する教訓になっていると言えます。
・商売を行ううえで顧客台帳はきちんとつくること。
・そして、顧客とはきちんと関係性を築くということ。
顧客台帳を作り、顧客との関係性をきちんと構築することで、商品を繰り返し購入してもらえるようにする。これは、江戸時代だけでなく、今の世の中で考えても、とても大事なことです。
つい、最新のマーケティング法とかに興味を惹かれてしまいますが、じつは、商売で押さえるべきポイントというのは、江戸時代からそれほど変わってないということが、このことからわかります。
変わるモノ、変わらないものがたくさんある中で、江戸時代と比べても商売の基本はあまり変わっていないというのも、なんかイイですね(笑)
今回は以上です。
面白い!と思った方は、ぜひ取り入れてみてください。